2014年08月25日

驕るノームは久しからず

昨日の本番でのこと・・・

あまりの出来事に茫然自失となった。

自戒として記録しておくことにした。



下手のドアが開いた。
いつものように、右足から一歩を踏み出し、
舞台中央のピアノに手を添えてプリンセスお辞儀をし、
ふわぁっと椅子に座った。


一曲目のノクターンを弾き終え・・
二曲目の曲 リムスキー・コルサコフの”熊ん蜂の飛行”となる。

実は、この曲・・アタシらしくない選曲。
でも、今年に入ってからずっとくどくどと練習しぬいた。
熊ん蜂がブンブンと飛んで回るという情景描写で・・
短い曲だが、息をつく所がなく、イッキに弾き抜かなくてはいけない。

2回ほど、小さなコンサートで弾いてはいるが、
二回とも惨敗。
ある意味で、今回はリベンジの挑戦だった。

不安と恐怖が入り混じった中で、
(とにかく呼吸が大切。そして鍵盤から目を離さずに集中しなくては)
・・と・・スタートを切る。

懸念していた前半は、思った以上に波に乗って弾けた。
多分、直前までイメージトレーニングをしていた呼吸法が功を奏したのだと思う。

後半は、得意とするパッセージが続く。

(よし!いける)と思った瞬間のことだった・・・

どこか1音・・ミスった。
一秒にも達しない時間を・・そのまま通過すればいいものを・・
なぜか止まってしまった。

どうして止まったのだろうか・・
修復不可能だったのか・・
どこがどうなったのかまるで記憶がない。


熊ん蜂の羽音が突然止んだ。
これはホバリング状態ではなく、落下したわけでもなく、
宙に浮いた状態。

時間にすると数秒だと思うが・・
とてつもなく長い時間、熊ん蜂は宙に浮いたまま止まった。


ぎゅ〜んと脳を回転させて、
とにかく、確実で安全なところから再び弾き始めた。
何事も無かったかのように・・

ところが・・身体がこわばっている。
筋肉がうまく動かない。

歯を食いしばって(これほんと)
最後の半音階を上りつめ・・
やっと終わった。


楽屋で・・
衣装が脱げなかった。
汗で、身体にへばりついていたからだ。
一旦あきらめて、ハイヒールだけを脱ぎ捨て、
床にへたりこんだ。


まったくもって驕りだった。
よし!と思った瞬間に奈落の底に落ちた。

要は、鍵盤から目を離したのだ。






打ち上げ会場は昨年と同じで、
築150年の旅館だった。

苦いノンアルコールビールを飲む。

宴もたけなわの頃・・
いきなりの直下型地震。

ドカンと下から突き上げるような揺れに、
今回の厄払い終了。

怖かったぁ(汗)


打ち上げ会場









オヤジ晩酌


主催者が気を利かせて持たせてくれた地酒を飲む。

冷酒



チャッチャと作った肴は・・

「ピーマンと茄子の油味噌」


茄子とピーマンの油味噌








毎夜、眠りに就くまでの時間を、読書に当てているが・・

今、夢中になって読みふけっている吉川英治の「新平家物語」を、
この夜、手に取る気分ではなった。

故郷に帰って、順調に上り坂だった仕事への戒めとなる出来事だった。


今回の苦い教訓を肥やしにして、
又、明日から頑張ろうと思う。


”驕る平家は久しからず”

at 15:17│Comments(16)徒然 

この記事へのコメント

1. Posted by 三面相   2014年08月25日 20:05
状況が手に取るごとく伝わってきます。
なんとなく自分のことのように汗が出る思いです。
でも天下の平家です大丈夫です
ちょっと酔ってるかも、アハハ
こちら野菜が高いのでオクラとゴーヤばかりの晩酌
ちょっと魚もあぶりましたが…
新潟の酒、たかの井、冷酒で飲み過ぎたかも…
そこに見えるお酒も旨そうですねえ
2. Posted by スー   2014年08月26日 04:20
発表会でのいや〜な経験をリアルに思い出してしまいました。失敗を詳細に書き起こす勇気に頭が下がりました。さすがプロですね。

お疲れさまでした。

3. Posted by ノーム   2014年08月26日 08:03
三面相さん
汗が出る思い・・共にして下さいましたか!
身内しかありえませんから、嬉しいです。

それにしても、新潟の”たかの井”は美味しいでしょう♪
ゴーヤカーテンにしてよかったですね!
ゴーヤ・・・食べたいなぁ・・
来年はアタシも、グリーンカーテンはゴーヤにしょっと♪
あの苦味が、冷酒に合うんですよねぇ・・
日本酒が旨い季節になってきましたね!
この地酒もすばらしく美味です。
筑波山のお膝元にある造り酒屋なんですよ。
4. Posted by ノーム   2014年08月26日 08:12
スーさん
おはようございます
嫌〜なことを思い出させてごめんよ(爆)
勇気(笑)を勝機に変えることが出来るように・・
一歩ずつ階段を上っていくね☆
いつか、家のピアノで聴いて下さい。
5. Posted by KAZU   2014年08月26日 12:40
4 こんにちは〜
弘法も筆の誤りですね。。(笑)

その焦った様子と楽屋の
光景を見てみたかったです。(笑)
6. Posted by おりーぶ   2014年08月26日 20:51
5 ご無沙汰しております!

ノームさんの演奏、聴きたい!
どこへ行けば聴けますか?
7. Posted by ノーム   2014年08月27日 06:45
KAZUさん
おはようございます

>弘法も筆の誤りですね。。(笑)

↑↑そうじゃない。。(笑)
「愚者にも千慮に一得あり」を学んだわ。
本番でしか確認出来ないのよねぇ・・・
8. Posted by ノーム   2014年08月27日 07:02
おりーぶさん
あらぁ〜嬉しい☆
遊びに来て下さったのね

しかし、不思議なこともあるものだわ・・・・・
今ね、鉄瓶でお湯を沸かしてた時に、
(おりーぶさんチの鉄瓶、うまく湯垢ついたかなぁ)って思ってたのよ。
朝茶を飲みながらパソコン開けたら、なんと、おりーぶさんが!

去年までは西の旅が多かったんですが・・
今度西に行く時は、ご連絡させて下さい。
聴きたいと言って頂いてどうもありがとう
ドキドキしながら、ぜひ聴いてくんり☆
打ち上げは、があこ鮨 だわね!
9. Posted by えごのき   2014年08月27日 08:40
う〜っ、心臓に悪いお話でした。

スーさんのおっしゃるとおり、ノームさんやはりプロフェッショナルですね。敬意!
10. Posted by 鍋   2014年08月27日 09:57
優雅に見えても、やはり薄氷を踏み歩く厳しい世界なんですねえ。当たり前だが、どこの世界も甘くないんだな。

俺って現実逃避ばかりするから、ノームさんの爪の垢を煎じて飲まなあかんわ。


寿命縮めない程度に頑張ってね。どんどん良い音出しちゃって下さい。
11. Posted by 和美   2014年08月27日 11:37
ノームさん こんにちわ

あまりにリアルな描写に、息を飲みました。
最後は、という夢を見て目覚めた というオチかと思いきや。
プロフェッショナルの心の中を、垣間見れた素敵なブログでした
12. Posted by ノーム   2014年08月28日 07:15
えごのきさま
おはようございます

えごのきさんも身内になっちゃった
驚かせてごめんなさい(笑)
こういうことはよくあるんですよ。
でも、止まったっていうのは初めて・・・
安全圏内(自分なりの速度とか、演奏上の気合の入れかた)で臨めば、
大事故にはならないんですが・・
アタシはそれじゃ意味が無いと思うので、全力で弾きます。
心の中は、(事故っても人が死ぬわけじゃないんだから)と自分をなだめてます(笑)
挑戦することこそ、今、一番大切なことだと思っているの。
来年の1月に、又、この曲を弾く場面があるので、4度目の挑戦となります!

ここのところ毎日寒いですが、えごのきさん地方はどうですか?
このまま秋になるのかしら・・
13. Posted by ノーム   2014年08月28日 07:34
鍋さん
おはよ♪
そうなのよ・・
湖に遊ぶ白鳥は優雅に見えるけれど、
湖面の下は、異様な激しさで水掻きを動かしてるのよ。

鍋さん、現実逃避派なの?(笑)
そうは見えないけどねぇ・・・・
でも、それを言うなら・・アタシも現実逃避派です。
自分の実力をもって臨めば、こういう稚拙な事故はなかったもん。
実力以上の事に挑戦してるので、危うくなる。
熊ん蜂が、夏の終わりの蝉の断末魔になっちゃった(爆)
しかし、絶対にあきらめないわ☆
がんばる!
どうもありがとう。
14. Posted by ノーム   2014年08月28日 07:41
和美さん
おはようございます♪

いつかこの記事を読み返して笑えるように・・との願いを込めて書きました。
失敗は思い出したくないのが本音なんだけど、
目を背けると、そこで成長は止まるもの。

励まして下さってどうもありがとう!
15. Posted by 詩郎   2014年08月29日 22:03
大変ご無沙汰致しております!
時々はこちらを覗かせて頂いてはおりましたが・・・

小生、現在は実家に”寄生”しております。

非常に興味深い逸話でした。
そして”ノーム様”とは到底比べ物にはなりえない
小生のヘタレ学生演劇時代を想起いたしました。
エエ、「台詞」忘れました。
完全に、そしてその事に全く気づかずに・・・
あの時は相手役が上手に誤魔化してくれて
ました、嗚呼!
でも逆に台詞忘れて棒立ちになった相手に
その台詞を完全にトレースして難無きを得た事もありましたが・・・
あの頃は若くて記憶力も良かったんだなァ・・・

でも失敗の無い人生って有り得ないじゃないでしょうか?
(”その方が面白い”なんて言う気はサラサラありませんが)

あと小生、現在は高血圧で痛風で腎臓異常っぽいです!


追伸:『新・平家物語』は紛れもない名作です!
(『私本・太平記』も面白いです)
16. Posted by ノーム   2014年08月30日 08:23
詩郎さま
びっくり!そして嬉しい
大陸から帰国なされて、どうしてらっしゃるんだろうと・・
寂しかったです。

演劇の役者さんも怖いですよね・・ホント・・
よ〜くわかります。
独り芝居ならまだしも、相手があることだし・・
事と次第によっては、筋が変わってしまう(爆)

詩郎さまのことですから、ドボルザークの”新世界交響曲、よくご存知でしょ?
あの長〜いシンフォニーの中で、シンバルが一発だけ鳴る所があるんです。
シンバル奏者にとっては、見せ場で・・だけど震える所だそうです。
大阪公演で、指揮者ご指名の奏者が東京から行きました。
本番で、彼は・・そろそろだなと厳かに椅子から立ち上がり構えました。
(シャ〜ンと、金の粉を振り散らすようなシンバル一発)が・・
(カポッ・・・っとシンバルが組み合ったまま、惨めな音)だった・・
笑えませんよね

新平家物語、凄い小説ですね・・・
読んでいて、その時代の空気とか匂いまで感じる小説は初めてかも・・
蒸れる草の匂いや、衣擦れの音まで聞こえる。
しかし、あの時代の武将の戦場での鎧冑、駿馬、すべて男の粋ですね。
美しいのは女だけじゃないのね・・
私本・太平記・・持っています。
じっくりと読み返してみます。

詩郎さま・・お身体おいとい下さいませね・・
お母様がご心配なさいますよ

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